※各文章は「▼続きを読む」を
クリック(タップ)することで下に展開します。
目次に戻る際は右下部のボタンをご利用ください。
幼児の眠りの研究を行うようになったきっかけですが、これまで私は、睡眠に関する研究をいろいろ行ってきたのですが、その中の一つとして、赤ちゃんの眠りのリズムがどのように発達するのかについて研究をしていました。そこで、次は幼児の眠りの研究をするのが自然かなと思っていたこともあり、当時は教育学部の教員だったので、なんとなく使命感のようなものもあったのかもしれません。
それから数年たって、自分の2人の子どもが一年間だけですが、保育園に通うことになりました。下の当時3歳のこどもが朝、保育園に行くのをとても嫌がって、その理由を聞くと、眠くもないのに寝かされるのが嫌だというのです。
子どもはお昼寝をするものだという感覚が、なんとなく皆さんの中におありだと思います。当時の私も一般の方の感覚とほとんど違わず、下の子は早熟なところがありましたので、この子特有のことだと最初は思いました。
ところが調べていくうち、幼児期にはお昼寝をする子がどんどん減っていって、小学校入学ぐらいまでにほとんど昼寝は消失してしまうということがわかりました。普通の発達にしたがえば、昼寝はこの時期、少なくとも小学校入学前には取らなくなるのですが、保育園では寝かせ続けているわけです。
これは言い方を変えれば、幼児期に人工的にお昼寝を取らせた場合にどうなるかという実験を国家的なスケールで行っているにも等しいことです。また、お昼寝の機能が科学的に検証されないまま、自然の発達経過と異なる生活習慣が多くの幼児に課されている状況にも、疑問を感じました。そこで、幼児期の眠りの発達を幼稚園児と保育園児で比較しようと考えたわけです。
調査の結果、幼稚園児と比べると保育園児は平均で約30分入眠時刻が遅いことがわかりました。それ以外にも、幼稚園児と比べて朝の寝不足感が強く、朝の機嫌も悪く、園への行き渋りも頻繁で、夜ふかしで寝つきも悪いという結果でした。保育園児の入眠時刻が遅いのは、以前から指摘されていましたが、両親が共働きで家庭が夜型化しているからだろうとされていました。しかし、私たちが行った調査によれば、幼稚園児の母親と保育園児の母親とで夜、眠る時刻に差はなく、母親の眠る時刻とその子どもの眠る時刻との間の関係性もまた、認められませんでした。
したがって、保育園児に夜ふかし傾向が見られる理由は、家庭の夜型化以外に求める必要があります。また、成人を対象にした実験研究でも午後に長いお昼寝を取ると、夜の眠りで寝つきが悪くなったり、浅くなったりすることが知られていました。
そこで私たちは、幼稚園児がお昼寝をした日と昼寝をしなかった日の間で、前日の睡眠時間とその当日の就床入眠時刻に差があるかどうかを調べてみました。その結果、お昼寝をした日の前夜の睡眠時間は、お昼寝をしなかった日の前夜と比較して差がありません。このことによって、前夜の寝不足を補うためにお昼寝をしているのではないということがわかります。
また、お昼寝をした日のその夜の入眠時刻は、お昼寝をしなかった日と比べて約30分遅くなっていました。つまり、午後にお昼寝をとると、約30分寝るのが遅くなってしまうということです。しかも、この約30分という差は、幼稚園児と保育園児の就床入眠時刻の差と同じでした。
これらの事実から、私たちはすでにお昼寝が必要ではない子どもにも無理に昼寝を取らせることが、夜ふかしや日中の心身の不調に結びつくのではないかと考えています。
また、小学校にあがり、実際にはお昼寝を取らなくなった後も、元・保育園児たちは小学校四年生くらいまで夜ふかしが続くということもわかって来ました。幼児期の強制的なお昼寝の習慣は、かなり後まで影響を及ぼすと考えられます。
お昼寝は、発達に伴って6歳になるまでにほとんどのお子さんが取らなくなる現象です。とはいえ個人差があって、3歳でも眠らない子もいれば、5歳でもよく眠るこどももいます。お昼寝を止めるかどうかは、ひとりひとりのお子さんの様子を見ながら決めないといけないと思いますが、だいたい目安としては4歳になったら、寝ない子は無理に寝なくても良いということにしてはいかがでしょうか?
もう、ずいぶん昔のことになってしまいましたが、2005年の6月末から7月初めにかけて、栃木県宇都宮市の栃木県立総合文化センターで、第30回の日本睡眠学会が開かれました。幼児の眠りの研究は、学会で発表したり、学術論文として出版したりしてはいたのですが、これまでの私が行ってきた睡眠に関する研究の中でも、この幼児の眠りの研究結果は、科学的な事実として研究者が知っていれば良いということではなく、一般の方に広く知っていただく必要があると考え始めていました。
大学の教員をしていると地域での講演会などに呼ばれることも良くあるのですが、保育園の昼寝についての結果については、そのたびに反響も大きく、そうした事からも皆さんに知っていただく必要を痛感していたのです。
そこで、学会の催しとして、「子どもの眠りが危ない!ではどうすれば良いのか?」と題して公開講座を開きました。私は司会を務めさせていただきましたが、子どもの眠りの研究で有名な東京北社会保険病院の神山潤先生や、地域への生活習慣改善の介入などで有名な広島国際大学の田中秀樹先生、照明を含めた光による睡眠の制御に詳しい京都工芸繊維大学の小山恵美先生に登壇いただき、福田も演者として子どもの眠りの話をいたしました。
この公開講座の終了後、お一人の紳士が私の元を訪れ、質問をされました。その紳士が、福島市の「あすなろ保育園」の星康夫園長先生でした。宇都宮で開いた公開講座に地元福島の園長先生に来ていただけたのには、非常にびっくりもし、感激もいたしました。
その後、星康夫先生から、福島市の私立保育園の園長先生たちの集まりで幼児の眠りについての講演をするように依頼され、保育園のお昼寝のこともお話しました。保育園で一般的に行われている昼寝の日課を否定する内容の講演は、園長先生方からさまざまな批判を受けるのではないかとの覚悟で望んだのですが、むしろ、とても好意的に受け入れてくださり、何名かの先生方とは名刺交換もさせていただきました。 私立保育園の園長先生たちの集まりは、非常に和やかで、その雰囲気も、当時、まとめ役をお努めだった星康夫先生のお人柄によるものなのかなと思いました。次に述べる「こじか保育園」の佐々木洋子先生とも、この時に初めてお会いしたのです。
それから数年たって、自分の2人の子どもが一年間だけですが、保育園に通うことになりました。下の当時3歳のこどもが朝、保育園に行くのをとても嫌がって、その理由を聞くと、眠くもないのに寝かされるのが嫌だというのです。
子どもはお昼寝をするものだという感覚が、なんとなく皆さんの中におありだと思います。当時の私も一般の方の感覚とほとんど違わず、下の子は早熟なところがありましたので、この子特有のことだと最初は思いました。
ところが調べていくうち、幼児期にはお昼寝をする子がどんどん減っていって、小学校入学ぐらいまでにほとんど昼寝は消失してしまうということがわかりました。普通の発達にしたがえば、昼寝はこの時期、少なくとも小学校入学前には取らなくなるのですが、保育園では寝かせ続けているわけです。
これは言い方を変えれば、幼児期に人工的にお昼寝を取らせた場合にどうなるかという実験を国家的なスケールで行っているにも等しいことです。また、お昼寝の機能が科学的に検証されないまま、自然の発達経過と異なる生活習慣が多くの幼児に課されている状況にも、疑問を感じました。そこで、幼児期の眠りの発達を幼稚園児と保育園児で比較しようと考えたわけです。
調査の結果、幼稚園児と比べると保育園児は平均で約30分入眠時刻が遅いことがわかりました。それ以外にも、幼稚園児と比べて朝の寝不足感が強く、朝の機嫌も悪く、園への行き渋りも頻繁で、夜ふかしで寝つきも悪いという結果でした。保育園児の入眠時刻が遅いのは、以前から指摘されていましたが、両親が共働きで家庭が夜型化しているからだろうとされていました。しかし、私たちが行った調査によれば、幼稚園児の母親と保育園児の母親とで夜、眠る時刻に差はなく、母親の眠る時刻とその子どもの眠る時刻との間の関係性もまた、認められませんでした。
したがって、保育園児に夜ふかし傾向が見られる理由は、家庭の夜型化以外に求める必要があります。また、成人を対象にした実験研究でも午後に長いお昼寝を取ると、夜の眠りで寝つきが悪くなったり、浅くなったりすることが知られていました。
そこで私たちは、幼稚園児がお昼寝をした日と昼寝をしなかった日の間で、前日の睡眠時間とその当日の就床入眠時刻に差があるかどうかを調べてみました。その結果、お昼寝をした日の前夜の睡眠時間は、お昼寝をしなかった日の前夜と比較して差がありません。このことによって、前夜の寝不足を補うためにお昼寝をしているのではないということがわかります。
また、お昼寝をした日のその夜の入眠時刻は、お昼寝をしなかった日と比べて約30分遅くなっていました。つまり、午後にお昼寝をとると、約30分寝るのが遅くなってしまうということです。しかも、この約30分という差は、幼稚園児と保育園児の就床入眠時刻の差と同じでした。
これらの事実から、私たちはすでにお昼寝が必要ではない子どもにも無理に昼寝を取らせることが、夜ふかしや日中の心身の不調に結びつくのではないかと考えています。
また、小学校にあがり、実際にはお昼寝を取らなくなった後も、元・保育園児たちは小学校四年生くらいまで夜ふかしが続くということもわかって来ました。幼児期の強制的なお昼寝の習慣は、かなり後まで影響を及ぼすと考えられます。
お昼寝は、発達に伴って6歳になるまでにほとんどのお子さんが取らなくなる現象です。とはいえ個人差があって、3歳でも眠らない子もいれば、5歳でもよく眠るこどももいます。お昼寝を止めるかどうかは、ひとりひとりのお子さんの様子を見ながら決めないといけないと思いますが、だいたい目安としては4歳になったら、寝ない子は無理に寝なくても良いということにしてはいかがでしょうか?
こじか保育園の佐々木洋子園長先生からこじか保育園でも保護者の皆様のまえで、幼児のお昼寝の話をするように依頼をうけ、こじか保育園にでかけました。佐々木洋子先生は、とても物腰の柔らかな先生で、マザーテレサの施設を訪問されたことがあるとのことですが、とても慈愛にみちたまなざしをお持ちの先生です。
こうして星康夫先生のお導きで、佐々木先生とも知り合うことが出来たのですが、保育園のお子さんの生活リズムの研究を、新しい装置を使って再度行いたいと考えていたところでしたので、星先生と佐々木先生にご相談しましたところ、快く引き受けていただきました。
それまでの幼児の眠りの研究は、お母さんや保育士の先生方に、「睡眠日誌」という記録表をつけていただくものでした。人間が記入するものですから、どんなに気をつけていても、記憶違いや記入ミスなどから誤差が生じます。そこで、もっと客観的に眠りのリズムを自動的に計測できないかと考えていたのですが、image図に示すような活動量の連続記録装置を使うことを考えました。大きさは腕時計より少し小さい程度で、腕時計と同じように利き手ではないほうの手首(右利きの場合左手の手首)につけ、起きているときも寝ているときもつけたままにしてもらいます。この機械は、万歩計と同じような原理で、体が動くと、動いたことを小さな本体の中に記録します。一分間に1回のデータを記録をするようにすると、15日間データを溜め込むことができます。起きているときには、わずかながらでも身体自体、もしくは腕が動いていますが、眠ると身体の動きや腕の動きは極端に少なくなります。そこで、活動量を連続記録することによって、何時から何時まで眠っているのかを客観的に、そして自動的に知ることが出来るのです。ちょうど、このテーマに興味を持ってくれたゼミ生の大久保尚也君に手伝ってもらうことが出来ました。
このことが直接のきっかけではないのですが、こじか保育園のすぐそばにある、佐々木洋子園長のご長男の佐々木信一郎園長の「こじか・子どもの家」で大久保君は働かせていただくことになりました。研究者が非科学的なことを言うようですが、何か運命のようなものを感じました。
実は、とても残念なことに、この研究の終了後、しばらくして星康夫先生が他界されました。エネルギッシュに活躍されていた先生が入院されたことは、お聞きしていたのですが、ふだんとてもお元気に見えただけに、亡くなられたと伺ったしたときにはとても信じられませんでした。
その後、星康夫先生のあと、奥様の星千重子先生が園長となり、あすなろ保育園は、さらに、元気な園児たちの賑やかな声であふれています。
それから数年たって、自分の2人の子どもが一年間だけですが、保育園に通うことになりました。下の当時3歳のこどもが朝、保育園に行くのをとても嫌がって、その理由を聞くと、眠くもないのに寝かされるのが嫌だというのです。
子どもはお昼寝をするものだという感覚が、なんとなく皆さんの中におありだと思います。当時の私も一般の方の感覚とほとんど違わず、下の子は早熟なところがありましたので、この子特有のことだと最初は思いました。
ところが調べていくうち、幼児期にはお昼寝をする子がどんどん減っていって、小学校入学ぐらいまでにほとんど昼寝は消失してしまうということがわかりました。普通の発達にしたがえば、昼寝はこの時期、少なくとも小学校入学前には取らなくなるのですが、保育園では寝かせ続けているわけです。
これは言い方を変えれば、幼児期に人工的にお昼寝を取らせた場合にどうなるかという実験を国家的なスケールで行っているにも等しいことです。また、お昼寝の機能が科学的に検証されないまま、自然の発達経過と異なる生活習慣が多くの幼児に課されている状況にも、疑問を感じました。そこで、幼児期の眠りの発達を幼稚園児と保育園児で比較しようと考えたわけです。
調査の結果、幼稚園児と比べると保育園児は平均で約30分入眠時刻が遅いことがわかりました。それ以外にも、幼稚園児と比べて朝の寝不足感が強く、朝の機嫌も悪く、園への行き渋りも頻繁で、夜ふかしで寝つきも悪いという結果でした。保育園児の入眠時刻が遅いのは、以前から指摘されていましたが、両親が共働きで家庭が夜型化しているからだろうとされていました。しかし、私たちが行った調査によれば、幼稚園児の母親と保育園児の母親とで夜、眠る時刻に差はなく、母親の眠る時刻とその子どもの眠る時刻との間の関係性もまた、認められませんでした。
したがって、保育園児に夜ふかし傾向が見られる理由は、家庭の夜型化以外に求める必要があります。また、成人を対象にした実験研究でも午後に長いお昼寝を取ると、夜の眠りで寝つきが悪くなったり、浅くなったりすることが知られていました。
そこで私たちは、幼稚園児がお昼寝をした日と昼寝をしなかった日の間で、前日の睡眠時間とその当日の就床入眠時刻に差があるかどうかを調べてみました。その結果、お昼寝をした日の前夜の睡眠時間は、お昼寝をしなかった日の前夜と比較して差がありません。このことによって、前夜の寝不足を補うためにお昼寝をしているのではないということがわかります。
また、お昼寝をした日のその夜の入眠時刻は、お昼寝をしなかった日と比べて約30分遅くなっていました。つまり、午後にお昼寝をとると、約30分寝るのが遅くなってしまうということです。しかも、この約30分という差は、幼稚園児と保育園児の就床入眠時刻の差と同じでした。
これらの事実から、私たちはすでにお昼寝が必要ではない子どもにも無理に昼寝を取らせることが、夜ふかしや日中の心身の不調に結びつくのではないかと考えています。
また、小学校にあがり、実際にはお昼寝を取らなくなった後も、元・保育園児たちは小学校四年生くらいまで夜ふかしが続くということもわかって来ました。幼児期の強制的なお昼寝の習慣は、かなり後まで影響を及ぼすと考えられます。
お昼寝は、発達に伴って6歳になるまでにほとんどのお子さんが取らなくなる現象です。とはいえ個人差があって、3歳でも眠らない子もいれば、5歳でもよく眠るこどももいます。お昼寝を止めるかどうかは、ひとりひとりのお子さんの様子を見ながら決めないといけないと思いますが、だいたい目安としては4歳になったら、寝ない子は無理に寝なくても良いということにしてはいかがでしょうか?
私が新聞やテレビなど、メディアを通じて幼児のお昼寝についての研究結果をお話していることが、二本松市のまゆみ学園の園長先生である古渡一秀先生の目にとまり、講演するように依頼をうけました。また、こうして新しい出会いがありました。
二本松市のまゆみ学園は、もともと「まゆみ幼稚園」と「中里保育園」の2園を運営されていましたが、幼稚園と保育園を統合する「幼保連携」の流れの中で「認定子ども園」という新しい形態を取り入れ、二つの園を、平成19年の3月から、幼保連携型の認定子ども園として全国的にも非常に早い時期にスタートされています。
古渡先生たちは、幼稚園と保育園とを統合する際に、保育園で行われてきた「お昼寝」をどうするかという事を非常に悩まれた結果、幼稚園児は寝ていないのだからということで、保育園でのお昼寝の日課を廃止するという英断を下されました。
認定子ども園としてのスタートも早く、本当に活動的な古渡先生らしいのですが、「お昼寝」を中止するという英断は、私のデータを見る前の段階で下されていて、その意味でも非常に先進的な試みをされていることで、私自身も非常にびっくりいたしました。
古渡先生たちは、昼寝を中止するという決断を下したものの、何か科学的な根拠がほしいと探している中で私の研究を知ってくださるようになったとのことで、これも、タイミングと言うか運命というか、人のつながりの不思議さを感じさせてくれる出来事でした。
それから数年たって、自分の2人の子どもが一年間だけですが、保育園に通うことになりました。下の当時3歳のこどもが朝、保育園に行くのをとても嫌がって、その理由を聞くと、眠くもないのに寝かされるのが嫌だというのです。
子どもはお昼寝をするものだという感覚が、なんとなく皆さんの中におありだと思います。当時の私も一般の方の感覚とほとんど違わず、下の子は早熟なところがありましたので、この子特有のことだと最初は思いました。
ところが調べていくうち、幼児期にはお昼寝をする子がどんどん減っていって、小学校入学ぐらいまでにほとんど昼寝は消失してしまうということがわかりました。普通の発達にしたがえば、昼寝はこの時期、少なくとも小学校入学前には取らなくなるのですが、保育園では寝かせ続けているわけです。
これは言い方を変えれば、幼児期に人工的にお昼寝を取らせた場合にどうなるかという実験を国家的なスケールで行っているにも等しいことです。また、お昼寝の機能が科学的に検証されないまま、自然の発達経過と異なる生活習慣が多くの幼児に課されている状況にも、疑問を感じました。そこで、幼児期の眠りの発達を幼稚園児と保育園児で比較しようと考えたわけです。
調査の結果、幼稚園児と比べると保育園児は平均で約30分入眠時刻が遅いことがわかりました。それ以外にも、幼稚園児と比べて朝の寝不足感が強く、朝の機嫌も悪く、園への行き渋りも頻繁で、夜ふかしで寝つきも悪いという結果でした。保育園児の入眠時刻が遅いのは、以前から指摘されていましたが、両親が共働きで家庭が夜型化しているからだろうとされていました。しかし、私たちが行った調査によれば、幼稚園児の母親と保育園児の母親とで夜、眠る時刻に差はなく、母親の眠る時刻とその子どもの眠る時刻との間の関係性もまた、認められませんでした。
したがって、保育園児に夜ふかし傾向が見られる理由は、家庭の夜型化以外に求める必要があります。また、成人を対象にした実験研究でも午後に長いお昼寝を取ると、夜の眠りで寝つきが悪くなったり、浅くなったりすることが知られていました。
そこで私たちは、幼稚園児がお昼寝をした日と昼寝をしなかった日の間で、前日の睡眠時間とその当日の就床入眠時刻に差があるかどうかを調べてみました。その結果、お昼寝をした日の前夜の睡眠時間は、お昼寝をしなかった日の前夜と比較して差がありません。このことによって、前夜の寝不足を補うためにお昼寝をしているのではないということがわかります。
また、お昼寝をした日のその夜の入眠時刻は、お昼寝をしなかった日と比べて約30分遅くなっていました。つまり、午後にお昼寝をとると、約30分寝るのが遅くなってしまうということです。しかも、この約30分という差は、幼稚園児と保育園児の就床入眠時刻の差と同じでした。
これらの事実から、私たちはすでにお昼寝が必要ではない子どもにも無理に昼寝を取らせることが、夜ふかしや日中の心身の不調に結びつくのではないかと考えています。
また、小学校にあがり、実際にはお昼寝を取らなくなった後も、元・保育園児たちは小学校四年生くらいまで夜ふかしが続くということもわかって来ました。幼児期の強制的なお昼寝の習慣は、かなり後まで影響を及ぼすと考えられます。
お昼寝は、発達に伴って6歳になるまでにほとんどのお子さんが取らなくなる現象です。とはいえ個人差があって、3歳でも眠らない子もいれば、5歳でもよく眠るこどももいます。お昼寝を止めるかどうかは、ひとりひとりのお子さんの様子を見ながら決めないといけないと思いますが、だいたい目安としては4歳になったら、寝ない子は無理に寝なくても良いということにしてはいかがでしょうか?
このように、今回のプロジェクトは、不思議な人との出会いの御蔭で始めることができました。実は、このプロジェクトそのものも、NHKのニュースで私どもの研究を取り上げてくださったことがきっかけとなり、「早寝早起き朝ごはん国民運動プロジェクト」の一環として取り組むことが出来るようになったものです。
文部科学省のプロジェクトチームの馬場幸治様や泡渕栄人様には、大変お世話になりました。また、プロジェクトの実施にあたり、3園の先生方には面倒なことをお願いしてしまい、申し訳なく思うと同時に、大変有り難く思っています。特に、あすなろ保育園の高荒先生と安達先生、こじか保育園の羽田先生、まゆみ学園の西山先生には、細々としたことまで本当に世話になりました。今回のプロジェクトは、こうした方々のご協力なしでは行うことが出来ませんでした。この場をお借りして御礼を申し上げたいと思います。
「こじか保育園」について書いたページにも書きましたが、今回のプロジェクトでは、腕時計型の活動量の記録装置を子どもたちの腕につけて24時間の活動量の変化を記録することが出来ました。眠っている時には身体がほとんど動かなくなるので、何時ごろ眠っているのかが客観的にわかります。図は、4歳児でお昼寝をとっている子どもたちと、とっていない子どもたちの活動量のパターンを比較したものです。お昼寝をとっている子どもは、午後すぐのお昼寝の時間帯に活動量の明瞭な落ち込み(図中↓の部分)が認められ、この時間帯にお昼寝をとっていることが分かりますが、お昼寝をとらない子どもは、その間、遊んでいますので活動量が落ちていません。夜になり活動量が低下すると眠りにつきますが、この2つのグループでは、眠りの開始時刻に1時間以上の開き(図中→ ←の部分)があります。つまり4歳児の場合、午後に長いお昼寝をとることで、夜の睡眠が1時間以上遅くなるということが客観的なデータで確かめられたということです。
今後のデータ処理で明らかになることは、このホームページにアップロードして行く予定ですので、よろしくお願いします。
それから数年たって、自分の2人の子どもが一年間だけですが、保育園に通うことになりました。下の当時3歳のこどもが朝、保育園に行くのをとても嫌がって、その理由を聞くと、眠くもないのに寝かされるのが嫌だというのです。
子どもはお昼寝をするものだという感覚が、なんとなく皆さんの中におありだと思います。当時の私も一般の方の感覚とほとんど違わず、下の子は早熟なところがありましたので、この子特有のことだと最初は思いました。
ところが調べていくうち、幼児期にはお昼寝をする子がどんどん減っていって、小学校入学ぐらいまでにほとんど昼寝は消失してしまうということがわかりました。普通の発達にしたがえば、昼寝はこの時期、少なくとも小学校入学前には取らなくなるのですが、保育園では寝かせ続けているわけです。
これは言い方を変えれば、幼児期に人工的にお昼寝を取らせた場合にどうなるかという実験を国家的なスケールで行っているにも等しいことです。また、お昼寝の機能が科学的に検証されないまま、自然の発達経過と異なる生活習慣が多くの幼児に課されている状況にも、疑問を感じました。そこで、幼児期の眠りの発達を幼稚園児と保育園児で比較しようと考えたわけです。
調査の結果、幼稚園児と比べると保育園児は平均で約30分入眠時刻が遅いことがわかりました。それ以外にも、幼稚園児と比べて朝の寝不足感が強く、朝の機嫌も悪く、園への行き渋りも頻繁で、夜ふかしで寝つきも悪いという結果でした。保育園児の入眠時刻が遅いのは、以前から指摘されていましたが、両親が共働きで家庭が夜型化しているからだろうとされていました。しかし、私たちが行った調査によれば、幼稚園児の母親と保育園児の母親とで夜、眠る時刻に差はなく、母親の眠る時刻とその子どもの眠る時刻との間の関係性もまた、認められませんでした。
したがって、保育園児に夜ふかし傾向が見られる理由は、家庭の夜型化以外に求める必要があります。また、成人を対象にした実験研究でも午後に長いお昼寝を取ると、夜の眠りで寝つきが悪くなったり、浅くなったりすることが知られていました。
そこで私たちは、幼稚園児がお昼寝をした日と昼寝をしなかった日の間で、前日の睡眠時間とその当日の就床入眠時刻に差があるかどうかを調べてみました。その結果、お昼寝をした日の前夜の睡眠時間は、お昼寝をしなかった日の前夜と比較して差がありません。このことによって、前夜の寝不足を補うためにお昼寝をしているのではないということがわかります。
また、お昼寝をした日のその夜の入眠時刻は、お昼寝をしなかった日と比べて約30分遅くなっていました。つまり、午後にお昼寝をとると、約30分寝るのが遅くなってしまうということです。しかも、この約30分という差は、幼稚園児と保育園児の就床入眠時刻の差と同じでした。
これらの事実から、私たちはすでにお昼寝が必要ではない子どもにも無理に昼寝を取らせることが、夜ふかしや日中の心身の不調に結びつくのではないかと考えています。
また、小学校にあがり、実際にはお昼寝を取らなくなった後も、元・保育園児たちは小学校四年生くらいまで夜ふかしが続くということもわかって来ました。幼児期の強制的なお昼寝の習慣は、かなり後まで影響を及ぼすと考えられます。
お昼寝は、発達に伴って6歳になるまでにほとんどのお子さんが取らなくなる現象です。とはいえ個人差があって、3歳でも眠らない子もいれば、5歳でもよく眠るこどももいます。お昼寝を止めるかどうかは、ひとりひとりのお子さんの様子を見ながら決めないといけないと思いますが、だいたい目安としては4歳になったら、寝ない子は無理に寝なくても良いということにしてはいかがでしょうか?
【ご注意】
このサイトは以前の内容を基本そのままに
モバイル対応等のリニューアル版として
制作しています。