【第1部】眠りのリズムの発達について学ぶ


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❶子どもの眠りの発達について

 よく「人生の3分の1は眠り」と言われますが、一日の3分の1もの時間を費やしている眠りが、起きている状態と無関係なはずがありませんね。

 

 子どもの発達を考える時、眠りは絶対に無視出来ない重要なものとなります。

 

 それではまず、子どもの眠りがどのように育つのかについてお話をしましょう。


●赤ちゃんの眠りはどのようにそだつのか

 先に「人生の3分の1は眠り」と書きましたが、生まれたての赤ちゃんは、一日当たり16時間も眠りに費やしていると言われています。つまりこの時期は「3分の2」が眠りなのです。しかも、2から3時間の短い眠りを何回も繰り返し、大人とは違って、ハッキリした1日のリズムがありません。

 

 


●幼児の眠りはどのようにそだつのか

 生後半年から1年くらいたつと、夜の眠りはかなりまとまって、夜にはあまり起きなくなります。実際、幼児になると、夜の眠り自体はほとんど変化せず、ベッドに入る時間も、朝起きる時間も、夜の眠りの長さも、3歳児から5歳児までほとんど一定なのです。

 

 



❷良いお昼寝のとり方とは

 前の章「子どもの眠りの発達について」で書きましたが、夜の眠りがある程度成熟したあとは、昼間の眠り、つまりお昼寝に大きな変化が起きるのです。

 

 この「お昼寝」ですが、取り方を間違えると良くない影響があります。

 

 実は、お昼寝にも良いお昼寝と悪いお昼寝があるのです。

 

 つぎに、このお昼寝のとり方について説明いたしましょう。


●発達にそったお昼寝のありかた

 先にお話ししたように、幼児期にお昼寝をとる子どもの割合はどんどんと減って行きます。これは、子どもの成長にともなって、夜と昼のリズムが徐々に出来てきて、夜にはちゃんと眠り、昼にはキチンと起きていることが出来るようになっていくという発達的な変化なのだと考えられます。

 

 


●保育園でのお昼寝について

 地域や個々の保育園で、実際のやり方は異なりますが、一般的に日本の保育園では、午後に1時間半程度のお昼寝(午睡)がとられています。これは、厚生労働省の保育所保育指針の中に午睡についての記述があり、これを根拠として行われるようになったと考えられます。

 

 



❸夜と昼のメリハリについて

 さきに、「眠りのリズム」という表現をつかいました。私たち人間は、「昼行性」の動物です。(「昼行性」という言葉は、なじみがないと思いますが、「夜行性」と逆の意味で使います。

 

 つまり、「夜行性」とは夜に活動する特性のことで、「昼行性」というのは、昼に活動するという特性のことです。)つまり、私たち人間は、昼間活動し、夜に眠るように出来ているわけです。

 

 


●不登校や認知症の眠りのリズムについて

 不登校のお子さんのうち約6~8割で眠りのリズムが乱れています。私たちは、不登校の高校生において、眠りのリズムが不規則であるほど家庭内暴力が多くなることを明らかにしました(図4)。図4こうした事は、このお子さんだけに限りません。

 

 


●思春期の子どもの眠りのリズムについて

 小学校の間は、眠りのリズムにそれほど大きな変化はありませんが、高学年になり思春期に入ると眠りにつく時刻が遅くなり始めます。眠りにつく時刻が遅くなる傾向は、中高生の間、ほぼ直線的に続いて、大学生になってもまだ続きます。

 

 



❹長いお昼寝と短いお昼寝

 乳児や幼児のお昼寝から思春期のお子さんの仮眠、不登校のお子さんや認知症の高齢者の眠りの乱れと付随症状の関係などを見てまいりました。その結果、日中のお昼寝や仮眠が夜の眠りや、夜と昼の活動のリズム自体に望ましくない影響を及ぼしているらしいことがご理解いただけたのではないかと思います。

 

 


●お昼寝は長さとタイミングが大事

 一般的にお昼ご飯を食べたあと、午後1時から3時くらいにとても眠くなることは、皆さん、誰しもご経験があろうかと思います。

 

 食後におなかに血液が行って、脳に行かなくなるからだと考えている方が多いようですが、これは全くの俗説で、脳の血流量は、食事をとってもとらなくても変わりません。